冬の入口に差しかかったニセコの畑で、
高田知明さんは一年を振り返りながら、
「今年はいろんなことが極端だったなぁ」と穏やかに語った。
じゃがいも、人参、ブロッコリー、ゆり根など
複数の作物を抱える高田さんの畑は、気候の揺れに大きく影響を受ける。
とくに今年は干ばつが昼夜を分けるように続き、作物の反応は例年以上に繊細だった。
計算と経験で組み立てる施肥設計
高田さんは、他社で扱う肥料に米倉商事のロング系肥料「肥実効(ひみこ)」を組み合わせて使っている。
父の代から続くやり方だが、「ただ混ぜればいい」というものではない。
「大変といえば大変だけど、ちゃんと計算してやらないとな。しんどいんだけど(笑)」
重労働ではあるけれど、それぞれの作物用に配合肥料をつくる。
そのままでも使えるけれど、配合することは父の代から
受け継がれてきたものだと教えてくれた。
粒の種類、成分の比率、どの成分がどのタイミングで効くか。
その細かな差が作物の生育に直結する。
今年のような極端な気象条件では、肥料の動き方が収量を左右することも多い。
干ばつが生んだ小粒のじゃがいも。
高田さんの畑でも、今年はじゃがいもが例年より小さかった。
「相場が良くても、絶対的な量がないんだよな。」
干ばつで土の水分が不足すると、
根が栄養を吸い上げる力も弱まり、肥料の効き方が不安定になる。
土壌が乾燥し続けると、窒素やカルシウムなどの移動が停滞し、
生育の初期から中期に充分に栄養が届かず、肥大が進みにくくなる。
そこへ急に雨が入ると、一気に肥大が進んでしまい、
じゃがいもの形が乱れたり、内部に空洞が出る年がある——
私たちが畑を見てきたなかでも、そんな場面に何度か出会ってきた。
高田さんが見てきた“いもが小さい年の畑の表情”は、
今年の気候を象徴しているようだった。
内部にできる空洞。外から見えない問題とカルシウムの話
取材でも話題になったのが、じゃがいも内部の空洞だ。
「外から見てもまったく分からんのさ。切ってみて初めて気づく。」
空洞化は、急激な肥大や天候の乱れによって起きやすく、
栄養の巡り方や生育リズムの乱れが背景にあるとされている。
高田さんがスーパーカルシウムの導入を考えている理由も、
まさにこの“巡り方”にあった。
「吸える形でやらないと、こういう年は特に効きが弱いんだわ。」
ふつうカルシウムは土壌を整える目的で使われることが多いが、
高田さんが話してくれたのは、作物そのものへカルシウムを届ける必要性だった。
カルシウムは植物体内を移動しにくく、
土にあるだけでは不足分を補えない場合がある。
だからこそ、根が吸収しやすい形で確実に供給することが、
空洞化を防ぐための大事な手当てになると感じてきたという。
来年の春に、また状況を見ながら相談しましょうと約束した。
数字と経験のあいだで畑を読む
高田さんの肥料配合は計算に基づくが、
最終的には「畑の様子を見ないと分からん」という。
数字だけでもなく、感覚だけでもない。
その両方を行き来しながら、毎年作物の反応を確かめていく。
「計算は合ってても、土が違うって言うときがあるんだわ。」
高田さんの頭の中ではすでに来年の配合が動き始めていた。
今年の干ばつが残した課題も、空洞化の予兆も、
ひとつずつ畑の表情として受け止め、
次の肥料選びや作付けに生かしていくお手伝いがしたい。
畑が一年をかけて返してくれる答えを、
わたしたちもともに支えていける知識をつけていきたいと思った。
概要
栽培作物
・馬鈴薯
・人参
・ブロッコリー
・ゆり根 他
使用肥料
・アミノサッポロエース
・肥実効(ひみこ)
成功ポイント
①計算 × 経験で組み立てる独自の施肥設計
②干ばつ年の“いもが小さい畑”から、気象と肥料の動きの関係を読み取っている
③数字と畑の表情の両方を見ながら、来年の配合に生かす姿勢