真狩の午後、Tさんは倉庫の奥に積まれた肥料袋を指しながら、
「今年は気候にだいぶ振り回されたなあ」とぽつりと言った。
前半は雨がなく、後半は一転して雨続き。
暑さも重なり、どの作物も例年通りとはいかなかった。
ただ、Tさんが口にした「振り回された」には、もう少し技術的な意味があった。
真狩の土はもともと保肥力が高く、
“乾く年”と“湿る年”で肥料の動きがまったく変わる。
男爵を作り続けていた時期には気づかなかったが、
近年の暑さと多雨で、土の反応そのものが変わってきたという。
気候に寄り添い整える畑づくり
この10年で、真狩の気候は大きく変わった。
Tさんは言う。
「昔なら化成でよかったんだけど、ここまで暑いと有機質を入れんと畑がもたない。」
化成肥料は分解が早く、涼しい年は扱いやすい。
しかし近年のように高温・乾燥が長く続くと、
有機質のゆっくり効いて持続する窒素の方が畑が安定する。
Tさんがアミノサッポロを選ぶ理由の1つは、
「土が疲れにくいから」だと教えてくれた。
品種を替えるという、畑の未来の選択
じゃがいもの話になると、Tさんは少し表情を変えた。
「来年はもう、全部きたかむいに替えようと思っている。
男爵はここ最近価格も安いし、気候に振り回されることが増えたからな。」
「きたかむい」は近年植える農家が増えている品種だ。
・形が安定しやすい
・肥大のスピードが揃う
・病気にも比較的強い
・暑さの影響を受けにくい
・価格も安定している
Tさんは、そうした周囲の評価や自分の畑の状態を踏まえ、
新しい挑戦をはじめることを教えてくれた。
肥沃な畑は、肥料を入れすぎない
真狩には、強い畑が多い。
「肥沃な畑なら、本来そんなに肥料はいらないはずなんだ。
地力があれば、ほっといても育つ作物だってあるしな。」
Tさんの施肥設計は、
「足す」より「引く」判断をどうするかが鍵になる。
同じ施肥量でも、肥沃地と痩せ地では作物の茂り方が全然違う。
その差を毎年見続けてきたからこそ、
量を入れない勇気も技術の一つだと感じさせられる。
畑が求める肥料を選ぶ
Tさんは、肥料そのものよりも
「畑との相性」についてのお話をしてくれた。
「粒の形状ひとつでも、合う、合わないがある。
今年みたいな年は特に、動き方を見ないとな。」
気候が揺れる年こそ、
肥料の種類・粒径・分解速度・作物の吸い込み——
それらが全体として畑にどう作用するかを見る必要がある。
気候が変われば、肥料も変わる。
畑の体力が変われば、品種も変わる。
その両方を読んで、毎年少しずつ作り方を整えていく。
Tさんの言葉のひとつひとつから
この土地で長く農業を続けるということの重みを感じた。
概要
栽培作物
・馬鈴薯
・小豆
・ビート
・麦
使用肥料
・アミノサッポロエース
・スーパーカルシウム
・パワフル有機2-5-0
・パワフル有機3-7-0
成功ポイント
①気候変化に合わせて「化成中心」から「有機質を組み込んだ畑づくり」へ転換
②男爵からの品種転換による、気候と市場への柔軟な対応
③肥沃な畑だからこそ、入れすぎない施肥設計